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研究テーマ



 騒音のサウンドデザイン,音質評価の他,ピュアオーディオの評価も行っています.また,解析のみではなく,適応制御などを用いた制御の研究も行っています.さらには,騒音下でのインターフェィスの研究も行っています.

 また,DSPデバイスを用いたアプリケーション開発も行っています.開発にはハードウェアの基本的知識の他,数学やプログラミング能力が必要です.それらの能力を身につけることにも主眼をおいています。あくまでも,卒業実験ではなく,卒業研究なので極力自分で解決策を見いだすことを基本としています.



音をはかる


サウンドデザインと音質評価



 どう快適な音空間を実現するかというサウンドデザインを実験心理学と聴感にあった信号処理の両面から評価しつつ,製品イメージにあった"音"を実現するとともに,視覚的に客観評価する方法を開発しています.

 高級感の得られるカーオーディオのボタン音,爽快なゴルフクラブのショット音,スポーツ感のある自動車加速音.これら非定常な音を対象にこれまで分析をし,それらの原因を解明してきました.

 また,各音を相互比較し,高級感やスポーツ感などの音による各製品の位置づけも行いました.

 いい音を聞いているときの人間の感覚をもっと客観的に見ることはできないでしょうか?

 アンケート結果からその人が何を考えているかを推定する(SD法)のも一つの方法です.

 そのほかに神経生理学的手法を用いることも有効です.

 現在,産業技術総合研究所とともに脳磁界計測による感性の客観化やその結果を用いた感性評価の自動化の研究を行っています(左写真).

 脳磁界計測を用いてヒトがモノを考えたときに出現する磁界をとらえ,そのときの感覚を脳の状態から客観化しようとするものです.


(図:小松真由美)

広島発のサウンドデザイン(WEST BREEZE No.73 2017.11)

現在,MAZDAとサウンドデザインに関わる研究を行っています.TVCMでもマツダデザインのこだわりを目にした方も多いと思います.1mm以下の造形でないと出せない感覚,すごいことだと思います.しかし、このようなデザインの良し悪しの感性を定量的に評価することはなかなか難しいものです.同様に,良し悪しの感性の評価が難しいものに、サウンドがあります.この難しい感性の定量評価に取り組むだけにとどまらず,“ヒトに何を感じてほしいのか”からサウンドをデザイン(設計)するとても挑戦的かつ創造的な活動を目指しています.クルマから生まれる様々な音の刺激からヒトは何を感じるのかを明らかにして,心理実験とともに生理計測からも評価します.サウンドデザインの評価の一つに“音質”があります.サウンドデザインにおける“音質”とは何だと思いますか?澄んだ音?重い音?高級感のある音?それともスポーティな音でしょうか?最も的確にその音質のすべてを表すのは“期待”です.期待した音,すなわちデザインに合う音であれば,ヒトは“いい音質”と評価しますが,自分が思い描いたものとは違っていた,すなわち期待以下だと“低い音質”ということになります.期待外れだとがっかりしますよね.それは心音や皮膚抵抗,脳波など様々な生理指標ではかることができます.いい音質の時も同様です.自分の期待に合うとワクワクします.そのような心理状態ではヒトは時の流れを忘れ,とてもよいパフォーマンスを発揮します.よいデザインはドライバーのパフォーマンスを引き出すのです.このようなサウンドデザインをMAZDAの様々な方々と学生さんと一丸となって行っています.広島発の新しいサウンドデザイン,さらにはクルマだけでなくあらゆるサウンドを目的に応じてデザインする,これが市大の地域貢献です.


ゴルフショット音

    ドライバーのショット音解析

    ゴルフショット音は,ゴルファーに飛びや心地よさを伝える重要な要素です.近年のゴルフクラブは,飛距離や方向性といった性能だけでなく音にも注目を集めています.

    収録には図のような工夫をし,ゴルファーの感じる音を再現しています.評価は,非定常音に適用可能な時変ラウドネスやWaveletによる時間周波数解析を用いて行います.

    これらの結果とショット音の主観的印象が一致することを確認しました.

    この解析方法を用いることで,ショット音の特徴やゴルファーによる好みの差を客観的に見ることが可能となりました.


    (図:平岡大司)



自動車音の解析

ブロロロォォォォ

現在,車内音は静けさだけではなく,音環境としての快適さが追求されるようになってきました.
これをサウンドデザインといっています.
車内音をサウンドデザインするためには騒音がどこから来るかを考える必要があります.
特に加速時にはエンジンの音が支配的になりますので,エンジンのどの音が車室内にやってきているのかをとらえてあげないとサウンドデザインに貢献できません.
この研究はエンジン音の内,吸気音にスポットを当てて,それと車内音の関係を簡易的に計測する方法の提案とどのようにすれば快適な音になるかを聴感実験を行いました.
結果的には
・この簡易的な方法は従来の手間のかかる方法に取って代わることができそうであること
・聴感実験により高級感やスポーティ感などの印象が加速時の時間変化に関連しそうであること
がわかりました.
この研究はこの秋にヨーロッパで行われた車内信号処理の国際会議でも好評を博しました.
Study on Noise Source Contribution of Accelerating cars and its Audibility Evaluations S.Ishimitsu, the 2005 Biennial on DSP for in-Vehicle and Mobile Systems, pp.1-5, Sesimbra, Portugal, September 2-3, 2005
2005.9.15
(図:浜田厚作)


 ドライビングシミュレータも導入し,音のみではなく,視覚による影響や視覚と音との相関,運転中に気がつきやすい音,快適な音についても明らかにする研究を進めています.



時間周波数解析


 以下に示した様々な手法に基づいた非定常信号解析を行います.現在はこれらの方法を 使った音声明瞭度の解析や向上,非定常下での異常診断システム開発の研究に挑戦してい ます.オーディオ音色解析と車内騒音源探査を企業とともに行っています.
ウェーブレット解析の新しい手法開発を行っていきます.


短時間フーリエ変換(STFT)
時間周波数解析の昔から有る方法
Wigner分布(WD)
1980年から量子力学で使われていた高分解能時間周波数解析を非定常信号解析に適用
wavelet 変換(WT)
信号処理を聴覚機構と似た手法で実現
Reduced Interference 分布(RID)
WDの干渉項を低減した補正WD
ブロック適応アルゴリズムによるWD(BLMSWD)
WDの干渉項を適応アルゴリズムにより低減した補正WD.干渉項の抽出も可能
瞬時相関関数
マザーウェーブレットに信号を用いて相関解析を行う手法
(図:Centre of Biomedical Signal Processing and Control, ISVR, University of Southampton)

脳波!異常なし!

ICFを使って,健常者と認知症患者から計測された脳波の瞬時相関解析による認知症診断を試みています.その結果,おおむね定性的にも定量的にも共に認知症の判別ができる可能性を示すことができました.(”実信号をAWに適用したウェーブレットによる脳波解析”日本機械学会論文集,70-694, C,pp.1795-1801,(2004.6))



オーディオ信号処理(聴感印象の客観的評価に関する研究)


 オーディオシステムなどにおける聴感印象に即した計測方法として,再現性に優れた静的計測が主として行われており,動的な特性を計測する方法についてはまだ確立していません.そこでその指標として,非定常信号解析方法により音質差を表現する”動的”評価手法について検討し,聴感印象との関連についての調査を行っています.


応用例

  1. 自動車吸気音の簡易的な相関解析方法(瞬時相関関数)の開発とサウンドデザイン
  2. 自動二輪車排気音の"スポーツ感"設計
  3. ボタン押し時・EEEEEフ触覚と音による"高級感"の特徴づけ
  4. ハイディフィニションオーディオ(高級音響機器)の音質差のウェーブレットによる可視化



音をあやつる


アクティブノイズコントロール

 車も騒音対策はエンジンやその伝搬経路についての物理的なものが主流ですが,最近,HONDAでアクティブノイズコントロールを使った乗用車も出始めました.
これは自動車だけではなく,船でも同様です.
これは非常にコストもかかるし、振動伝搬経路の緻密な調査が必要でした。
たとえば,船の場合ですと,船内全てを物理的に対策しなくても人間の居室のみを対象とし、デジタル信号処理によりその空間で騒音と逆相の音を作り出し、耳障りな音を人がいる場所だけ消せばいいです.
車の場合だと運転者の座る場所は決まっているわけでから,そこを中心に考えればいいことになります.
これまでは,本研究室ではあまり居住性について回顧されなかった貨物船や小型船舶に安価で後付けできる装置として検討してきました.

LMSアルゴリズム
Filtered-x LMSアルゴリズム
preconditioned LMS アルゴリズム
バーチャルマイク法

(図:小松真由美)

応用例

  1. 自動車,船舶などの空間音響制御,騒音抑制
  2. より自然感のある疑似サラウンド音の作成

「未来博士3分間コンペティション2016」最優秀賞 「聴覚フィードックを利用した発声トレーニング」(飯島)







音を認識する


骨導音認識システムの構築(SRg,Speech Recognition group)

 主として,騒音下での音声認識を対象としています.つまり,アイズフリーハンズフリーなインターフェィスとして音声認識が有益な移動体においては騒音は不可避的なものとなり,ノイズロバストなシステムが望まれるからです.

 F-1の通信システムで使われているマイクを使って,騒音下での認識システムを作 っています.これはunix上でC言語を使って作成してありますので,その使い方を収 得し,音声モデルの作成や補強を行います.昨年は高速話者適応を使ったモデルの適応処理とその効果について検討し,学会賞を取るなどの成果も上げました.


これは騒音が劣悪な環境でも動作可能な認識システムですので,現在図のような船舶の機関長代行システムの一部として検討しています.
骨導音による認識だけではなく,骨導音の音声品質の向上についても検討しています.
(図:山本宏樹)

音声認識についてをクリックして勉強しなさい
騒音下における音声認識
HMM(隠れマルコフモデル)
オートマトン
NOVO
骨導音
体内伝導音

応用例

  1. 体内伝導音による認識システムを用いた知識データベースへのアクセス(工場などでハンズフリーアイズフリーの状態で作業をしながら情報検索をする)
  2. 工場での体内伝導認識を用いた熟練技術者のノウハウデータベースの構築
  3. 高騒音下でのマン・マシン・インターフェィスシステム構築





音情報の福祉応用技術開発

 咽頭ガンにより声を失った人のための発声支援システムや難聴者のための安価な補聴器(集音器)の開発を行っています.

聴覚障がい者への音声フィードバック


広島市立大学広報誌W.B. vol.67, 2015年12月

声を作れ!



発声支援システムの応用技術。PAT!やってみた。

  骨の振動で音声を読み取るマイク 骨に伝わる発声の振動を皮膚から読み取り音声化する装置で、大騒音の家屋解体現場で作業員同士が安全確認のために現場で行っている会話が聞き取れるかに挑戦します!


骨導認識システムと組み合わせることにより、精度を向上させることに成功しました。(特許)

2009年キャンパスベンチャーグランプリを受賞しました。

  • 朝日新聞 2009年1月27日31面
  • 日刊工業新聞 2009年1月16日26面
  • 中国新聞 2009年1月16日8面
現在,咽頭癌患者の数は年々増加してきており,手術により咽頭を摘出した人は音源機能を失ってしまうために発声が不可能になります.このような機能障害者のためにこれまで様々な代用音声が実用化されてきました.その中の代表的なものに声帯を振動させて発声する食道発声法があります.しかし,・サの発声法による音声は必ずしも明瞭ではなく,屋外では騒音の影響なども重なって,コミュニケーションに障害が起きているという現状があります.そこで,声帯振動信号から明瞭な音声を生成するため,声道フィルタ特性を用いて声帯振動信号の補正を行うシステムの構築検討を行いました.声道フィルタはクロススペクトル法と学習同定法により作成し,それぞれにフィルタにより生成された音声品質を評価しました.(”声道フィルタによる声帯振動信号の音質向上に関する研究”日本機械学会2004年度年次大会論文集(6), pp.123-124 (2004.9))

応用例

  1. 発声障害者音声の明瞭化
  2. 共振現象を用いた安価な補聴器の開発

自然感のある補聴器の開発

 装着に違和感がなく,音声を聞き取りやすくするために,ディジタル信号処理に頼るのではなく機構的構造により検討を行った補聴器を開発しました.

神戸新聞ニュース(TV)などで報道

海外交流

海外との研究者とも交流しています.
現在,著者は騒音・振動の制御や解析を中心に研究を行っている.そこで今回は制御工学や信号処理分野および自動車メーカなど様々な研究者と交流し,様々な研究分野から今後の研究の方向性確認やヒントを得るべく,野心満々で調査・交流に出かけることにした.まず,英国での訪問においては,共同研究や情報交換を行っているサウザンプトン大学とシェフィールド大学の訪問により,騒音制御技術のこれまで進めてきた研究の成果総括および発展を目的とした.また,ドイツの訪問ではフォルクスワーゲン社への訪問で騒音に関する考え方について意見交換し,2つの工科大学(ミュンヘン,ベルリン)での制御工学分野から様々な研究のヒントを得・E驍アと,を目的とした.その結果,制御工学・信号処理に基づく様々な分野の研究現場からシーズやヒントを得ることができただけではなく,国際的人脈も形成できた.研究トピックだけではなく,世界の研究者の研究に対する姿勢や仕事の進め方など刺激を受ける点も多かった.また,研究者はもちろんであるが,学生たちも自分の研究に自信を持ち,大変積極的に議論に加わってきたりする様をみて,研究のみならず今後の教育に関する面でも参考になることが多かった.

(2003年度YME海外派遣報告(5)ードイツ,英国での交流記 石光俊介 日本マリンエンジニアリング学会誌 第39巻第5号 pp.17-20,(2004.5))より



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